「なぁなぁエアリス、今日何の日か知ってる?」
 花を摘む私の隣にしゃがみこみながら、その人は言った。
「なんでしょう」
「いやほら、女の子がほら、こうさぁ!」
「ザックスが女の子好きだってのは知ってるけど」
「いやそうじゃなくて、いや好きなんだけどそうじゃなくてさ!」
 しばし頭を捻らせている様が面白くて、私はやっぱり知らぬ振りを続けることにする。
「あっ」
「どうしたの?」
「もしかして不器用?」
「チョコくらい作れます」
「知ってんじゃん」
 その人は子供みたく笑った。眩しいそれが私は大好きだった。でも笑い返すことはしないで、怒ったようにそっぽを向く。香りを嗅ぐふりをして、顔を花で隠す。
「そんなこと言う人にはあげません」
「えー」
「あげません」
 でもまぁいいやとその人は言った。
「かわりにこれ貰うわ」
 私の口元のそれから一本抜き取って、その人は自分の耳に差し込んだ。
「似合わない」
 私は笑う。その人も笑った。





「チョコなんてあげません」