まただ、とクレティアンは嘆息した。
 今日は己の生誕日だ。
 別にこれといってケーキとロウソクで祝ってほしいなどとは思わないが、女性騎士からプレゼントをもらえるのは嬉しい。何が嬉しいかといえば、それはマニア垂涎ものの古書だったりするのだ。彼女らは金を出しあい、コネを駆使し、禁書さえ手に入れる。古書好きのクレティアンのために。当の本人はその苦労を知っていて尚、来年のプレゼントのために愛想を振り撒く。彼女たちは喜ぶ。喜んだ彼女たちは頑張って本を手に入れる。実によく出来ている。
 そんなこんなで総合的にめでたいはずなのだが、生誕日には必ず訪問者がある。
 誰かといえば、我が物顔で部屋に居座る長年の友人だ。
「ローファル、わざわざ鍵をこじあけてまで私の部屋に入らないでくれ」
「クレティアンが鍵をかけてしまうので致し方なくですよ」
「いや、鍵をかけてるのだから察してほしいのだが」
「おや、合鍵をくれるんですか?」
「なぜそうなる」
 この男はなんでも不気味に器用にこなすくせに、部屋は壊滅的に汚い。掃除ができないのではなく、物を整理する気がない。
 部屋が本で埋もれては、こうしてクレティアンの部屋にやってくる。ここを追い出されれば大部屋へ行く。クレティアンは幾度となく泣きそうになりながら慌てている下っ端騎士を見た。そりゃこんなのがいれば驚きもするだろう。だからといって助けはしないが。
「それで、クレティアン、今年はなんでした?」
 そして毎年この日には、なにがなんでも自分に会いにやってくる。
 もとい、そのプレゼントに。
「…今年は三世紀前の禁書だ」
「イヴァリース全土を探しても百冊とない曰くつきのかの禁書ですか」
 ありがたいことです、と目の前の男は拝んでさえ見せた。
 自分だって数多くの書物を持っているくせに、まだまだ足りないらしい。クレティアンもそうなのだが。
「そうだ、私からも贈り物がありますよ」
 熱心に古書に向けられていた視線が、こちらに移る。他意はなさそうに見えるのだが、これが厄介だ。
「まずは毎年恒例のワインです」
 ここまではいい。問題はこのあとだ。
「それでつまみなんですが―――」
「いや、いい」
「まぁそう遠慮せずに」
「どーせ手作りのケーキだとか言うのだろう。持って帰ってくれ」
 去年はワンホール食べさせられて痛い目を見た。
「大丈夫です、去年の反省を生かして甘いものではなくてモルボル触手の平干しにしました」
「どこが大丈夫なんだ?」
「知らないんですか、最高級珍味として愛されているんですよ。実にあとをひく味だと」
「一週間は何を食べても味が消えない殺人料理の間違いだろう」
「特殊な製法で毒を抜いたもので、高値で取引されるそうです」
「闇市場でな」
「クレティアンのためを思って調達してきたんですよ?」
「私のためを思うならいっそ何も用意してくれるな」
「まぁそう言わずに」
「いらん!」
「きちんと特上の臭い消しも持ってきました」
「そうまでして何故食べなきゃいけないんだ!」
「はい、あーん」
「や、やめ…! そんなものを近付けるなあぁあ!!」





「はっぴーばーすでー!」