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ティークはぶすくれていた。 「よく似合ってるよ、ティーク」 それというのも、目の前の先輩アーチャーのせいだ。満面の笑みでティークの頭を見ている。 「……どうも」 明らかに面白くないといいたげな声音にクロイツはまた笑う。 ティークの頭の上には白い花冠。 今日精霊の前で生涯の絆を誓う花嫁のお手製だ。無下にするわけにもいかない。正直恥ずかしいだけで嫌ではないが、笑われるのはどうしたって面白くない。 「なにを馬鹿笑いしているんだ」 言いながら、クロイツの妻であるセシルが部屋に入ってきた。 「いや、馬子にも衣装だなと思ってね」 「お前がそうやって笑うから、ただでさえしまりのない顔が残念なことになってるんだぞ」 何気にひどい。 「それでセシル、準備は?」 「上々だ」 さあ行けと送り出されれば、先ほどまでのすねた表情はどこへやら、一転めまぐるしく変化する。緊張と胸の高鳴りと。それらの感情がいっぺんに出ようとして、整理しきれていない。 ティークは姿勢を正した。襟元を直して気合いを入れなおす。 背後でまた笑う気配がしたが、無視した。 小さな部屋を出て光に向かって歩く。やがてその先に小さな影が見えた。同じく白い花を冠したマナだった。うっすらと化粧を施し、いつもの数倍輝いて見える。ティークは赤面しつつ、へにゃりと笑った。 今日二人は揃って精霊の御前に進みでて、生涯の絆を誓う。貴族の婚礼ではまた違うようだが、二人には似つかわしいように思う。 ティークは地面に右膝をついた。マナの手をとり、見上げる。 「ここに誓いをたてる」 「誓い?」 「僕は誓う。君が泣くなら、僕が笑わせる。君が笑ってくれるなら、僕は泣くほど幸せだから」 マナは照れたように笑みをこぼした。どこか泣きそうですらある。 「私と一緒に笑って生きてくれる?」 切実な願い。 「それは僕の望みでもあるから」 ティークは笑った。 満面の笑みで、どこか悲しみを宿す瞳を照らす。マナは笑った。守り守るのでなく、彼は笑顔をくれる。心をあたたかく満たすものを。 ティークは小さく鼻をすすって、立ち上がった。 「行こう」 小さな手に大きな手を重ね合わせて、前に向き直る。扉が静かに開こうとしている。扉が開ききって白い光が差し込む。 花冠が淡く輝いて、二人の笑顔を静かに照らしていた。
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