おわりに

 ここでアリオーソの書いた手記は終わっている。
 一体彼がどういった最期を迎えたのか、それを調べるのは比較的容易だった。アリオーソは初代市長という肩書きだったので、ウェロー史を細かく紐解けば自ずと知れた。彼は併合が実現したその日に亡くなっている。死因は凍死となっていた。それも部屋にいながらにして、である。何が起こったのかもちろん私は想像したが、やはり邪推の域を出ないだろう。これは私の胸に秘めておこうと思う。
 そもそも私は、一体どういったつもりでこの研究を書き記そうとしたのだったか。今となってはもはや分からない。そう、分からなくなってしまった。最初は偉大な発見だと思った。知り合いに話もしたし、これは公表されるべきだと、恥知らずにもそう思った。けれど裏付けをとろうと奔走しているうちに、アリオーソやシーラが感じていたであろうウェローの意思を、息吹を、私も感じることができた。
 私はアリオーソの望んだ通りに、この手記を元にあった場所に戻そうと思う。個別に保護魔法をかけたいという欲求を、それはかなりの労力だったが、私はどうにか退けた。この手記は、アリオーソに望まれた通りに、ひっそりと存在し、やがて人知れず朽ちてゆくべきなのだろう。
 そしてこの研究成果も、数多の史料と共に、私の書庫に眠らせておこう。いつか誰かが、私の子孫か、はたまた蔵書を引き継いだ誰かが、これを読んで彼らのことを知ってくれたら嬉しい。縁があれば、アリオーソの手記にも出会えるであろう。
 何の奇遇であろうか、これを書き終えんとしている今、外は吹雪である。白の女王がやってくるにふさわしい、空と大地の境界を失った白い夜だ。
 彼は最期に望んだ相手に会えたのだろうか。そうであったらいい。この白雪が、彼の魂を慰めてくれたらいいと、私はそう願ってやまない。


                                       偉大なる魂に敬意をこめて

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