生き残ってしまった。死のうと思ったわけじゃない。殺そうと思ったわけじゃない。ただ気づいたらナイフがそこにあって、それを持って、あの人に突き立てていた。そして、生き残った。ただそれだけ。偽りの王妃の応急処置をしたのは、王その人だった。わが身を省みぬその行動を、ひとは口々に褒めそやかした。私は死んでいても問題はなかったっていうのに。王冠はあの人のもの。ああ、そうよ、分かってた。あの人だって最初から私を利用する気だったの。そんなこと分かりきっていたはずでしょう、オヴェリア。なのに何故、夢なんて見てしまったの。彼だけは違うなんて、どうして思ってしまったの。馬鹿ね。救いようのない馬鹿だわ。かわいそうなのはあの人ね。私の愚かさゆえに傷を負ったもの。王として夫として、申し分ないほど私を大事に扱ってくれようとしたじゃない。私が子供だっただけよ。見えてなかっただけ。誕生日だからと差し出された花に、ただ私は微笑めばよかったのよ。それが務めなんだから。だから、冠を被るの。子供達がつくる花冠よりも煌びやかで脆い、偽りの冠を。助けを求めようにもあの人以外の名前なんて思いつきもしない私は。





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