「畏国もすっかり平和になったよな」
「たった五年でこんなに落ち着きを取り戻すなんて、ディリータ王さまさまだぜ」
「国を牛耳ってた大貴族が先の戦争で死んでたのも嬉しい要因でしたね」
「あとは世継ぎだよなぁ」
「まったくですね」
「もう五年経つのに、王妃に懐妊の兆しはないんだろ」
「オヴェリア様は畏国平定後まもなく暴漢に襲われて生死の境をさまよったから、子供は望めないって話だぜ」
「でも、ディリータ王は愛妾を一人も抱えてないそうですよ」
「さっさと愛妾の一人でも作って、世継ぎを生ませちまえばいいのによ」
「そうしないところがディリータ王のいいところなんだがな」


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「まったく、王はいつになったらご決断くださるのか」
「王妃に遠慮などせずともよかろうに」
「いつ何があるか分からないというのに、まったく」
「不謹慎ですぞ」
「いや、真実です。世継ぎの問題が片付かぬうちはやはり不安ですから。もし王に何かあって世継ぎがいなければ、また畏国は混乱しましょう」
「王妃がいるではないか」
「王妃に何ができる」
「貴殿、それは不敬罪であるぞ」
「事実ではないか。心無いものに操られるのがオチよ」
「…まぁ、そうなっても不思議ではありませんね。こうなったら、王妃から進言していただきましょう」
「それはちと…酷ではないか」
「いいえ、真に国を憂えるなればこそ」


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「まぁ、それは事実なの」
「えぇ、わたくし、しっかりと聞いてしまいました。王妃様が愛妾を持ったらどうかとご提案されていましたわ」
「それで、王は」
「ありえない、と一蹴されていましたわ」
「まぁ」
「王妃様も随分思い切ったことを仰りますのね」
「王妃様は静かに微笑みながら、毅然としておられました」
「国を担われる方として、大変頼もしいことではありませんこと」
「ですが、王妃様がおかわいそうですわ」
「でも王様は迷うこともなかったそうではありませんの。女として、羨ましく思いますわ」





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