なぜ抵抗しないのかと、不思議そうね。
 私はね、もう諦めることにしたの。逃げる力はなく、助けてくれる人もいない。だから、求められる役割をただ演じることにしたのよ。
 気づいていなかったの?
 私はきちんとあなたの隣にいるときは微笑んでいたでしょう。
 あなたに愛妾をすすめた時だって、私は「王妃」として行動したの。微笑んでさえみせたわ。あなたは面食らっていたみたいだけど。私は王妃だもの。当然でしょう。あなたには世継ぎが必要で、だったら応えるべきというだけよ。
 だからあなたの手が触れる今も、抵抗しようなんて思わないのよ。
 だからあなたの髪が撫でる肌も、気にせずそのままにしておくの。



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 理不尽だなどとは、思わないのか。
 俺はまた利用してるんだ。また刺される覚悟で手を伸ばしたっていうのに、今度は抗おうともしないのか。それほどの価値もないと?
 やっぱり自惚れてたのか。
 まだどこかで、見えないところで絆と呼べるものが残っていると。
 愛などなくとも、英雄ではないと知る者に側にいて欲しかった。もしまだ殺そうとするほどの激情が残っているのなら、マシだなんて思ってさえいた。たとえ毒を盛られても受け入れようとすら。妹への誓いは、まだ胸に残っているから。
 だから今まで弁解しようと考えもしなかったのに。
 だから今まで触れるなどと思いもしなかったのに。





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